ダニエラ・デ・マルキ独自の『ドロパージュ』という技法で表現される、泡のような、あるいは細胞のような地金のテクスチャー。それはまるで、テレーズの物語の舞台となったランド地方の、ざらついた松の樹皮のようです。蝉の乾いた鳴き声も聞こえそうですね。
静寂を纏うオニキス。
心の震えを隠したピンクアゲート。
そして、迷いと幻想を映し出すラブラドライト。
これらの石を身に纏うことは、テレーズのように『自分の真実』を貫こうとする、静かな決意の表明でもあるのかのようです。
« Ce qu'elle voyait, c'était son propre désert. »
(彼女が見ていたもの、それは彼女自身の砂漠だった。)
「彼女の孤独は、単なる寂しさではなく、自分自身を研ぎ澄ますための『砂漠』だったのかもしれません」オニキスはそんな孤独を研ぎ澄ます力が宿ります。
この作品の女性像とダニエラ・デ・マルキのジュエリーを重ねてみました。
オニキス(夜と意志)
« La nuit ne l'effrayait pas. » (夜は彼女を怖がらせなかった。)
誰にも侵されない、彼女の強固な意志を語るような黒。
ピンクアゲート(秘めた微熱)
抑圧された生活の中で、彼女の奥底で脈打っていた、生きることへの情熱の色。
ラブラドライト(曖昧な光)
霧の向こうに見える、救いとも幻影ともつかぬ曖昧な輝き。
これらの天然石は物語に沿って心の奥底を語ってくれるようです。
« Elle ne se sentait plus capable de rien, sinon de silence. »
(彼女は、沈黙以外には、もう何もできないと感じていた。)
この「沈黙」が、ダニエラ・デ・マルキのオニキスには宿っています。
単なる装飾品としてではなく、テレーズのように『自分自身の真実』を静かに携えるための守護石として。この春、ボルドーの風を感じるようなジュエリーを、あなたの指先に、そして耳回りに添えてみてはいかがでしょうか。
アルカションの森で、テレーズが背負わされていたもの。それは家族の体面、土地の継承、そして「妻」という役割の重圧です。右のタロットはワンド(棒)の10。画面を埋め尽くすように交差する10本の棒は、逃げ場のない檻のように、あるいは一人の女性が背負うにはあまりに重すぎる業(カルマ)のように見えます。しかし、その檻の向こう側に、静かに輝く『星』のカードがありますね。
無造作に選んだカードが優しく語りかけてきます。
【二子玉川ブログ執筆】 戒田 格(かいだ いたる) 横浜在住。学習院大学大学院フランス文学博士前期修了。専門は19世紀に活躍した詩人のロートレアモンです。一見、ファッションとは対極にあるような文学の世界ですが、そこにある『強い意志』や『美への執着』は、私が店頭でご紹介する一点一点の商品にも通じていると現場で日々感じています。 休日はフランス15世紀の発祥のマルセイユ版のタロット占いと研究をしています。 (二子玉川店6年目)