INOYA MAKIKO | 金沢のアトリエ探訪 - 美しいガラスに宿る、偶然の色と遊び -
カラフルでユニーク。繊細でいて、どこか野性的。金沢の住宅街に佇むデザイナー、猪野屋牧子(いのや まきこ)のアトリエ兼自宅からは、色彩豊かなアクセサリーやオブジェが日々生み出されている。その様子は、まるで終わりなき実験の連続である。
ガラスが生み出す、多彩な自然のモチーフ

アトリエ内の一角には、過去に制作した作品群が整然と並ぶ。

2025年6月に「記憶 H.P.FRANCE」で開催した巡回展に向けた新作。

本棚には、自然のモチーフやジュエリーに関する資料集が並ぶ。

作業デスクには彩りどりのガラス材が並ぶ。

数多のモチーフが重なって作られた精巧なガラスオブジェ。

過去に制作したジュエリーのレクション。
創作を支えているのは、“偶然から生まれる美”への飽くなき探究心だ。色ガラスに金属、箔、貝の粉など、異なる素材の“食べ合わせ”を確かめながら、何度も実験を繰り返してきた。「素材によって膨張率が異なり、組み合わせによっては割れてしまうことも。だからこそ偶然生まれる美しさに出会える」と語るように、彼女のガラスワークは、緻密な理論と感覚的な直感の掛け合わせと言える。
もうやり尽くしたと思っても、ふとした瞬間に技術が向上した実感が訪れる。そんな発見がある限り、創作は尽きない。「ガラスが溶けていく様子が本当に綺麗で、仕事中も癒される。見ているホッとするし、美味しそうだなと思う」そう語る表情には、素材そのものへの深い愛着と、今もなお続く好奇心が滲んでいた。

バーナーを使用し、1500°cの高温でガラスを熱していく。

まずは、持ち手となる透明なガラスの幹を熱し、土台を形成。

余分なパーツをカット。

空気を入れながら形を整えていく。

色がついたガラスや、金箔で後から色をつける工程。

後から色を落としたりガラスを曇らせたり、調整も自在だ。
伝統工芸とアートの街・金沢での暮らし

風情ある古民家が点在する静かな住宅街。

お気に入りスポットは、近所に広がる緑豊かな河川敷。作品の制作中は、この川沿いに腰掛けて一息つくこともあるそう。

古民家をリノベーションした猪野屋の自宅兼アトリエ。縁側には、長時間ガラスを高温で温めるための電気炉を設置。

縁側には研磨機も。

同じく作家でありアーティストの夫・横野健一氏のビーナスをモチーフにした作品に触発され、制作したオブジェ。
H.P.FRANCEとの取り組みについて
偶然と実験、そして暮らしの中で育まれる感性が織りなす、猪野屋牧子の作品。その手から生まれるガラスの多彩な表情は、私たちの日常に新たな彩りをもたらしてくれるだろう。

玄関は、靴箱風の収納がそのままインテリアに。

踊り場には天井までアートが展示されたスペース。ここは、横野氏の作品がメイン。

居間の窓。昭和レトロガラスと木製の窓枠も風情がある。

DIYでアレンジした風呂場。コンパクトなバスタブと異素材のタイル使いがスタイリッシュ。

キッチンにはお気に入りのグラスコレクション。一部、猪野屋自身の作品も。

日当たりの良い2階の一角は、横野氏のアトリエとなっている。

家の至る所でアートに囲まれながら、互いのものづくりを尊重し、刺激し合う、素敵な夫婦像だった。
Shop Information
INOYA MAKIKO巡回展 開催のお知らせ全国のH.P.FRANCE系列店にて、ガラス作家・猪野屋牧子(いのや まきこ)が本展のために制作した1点物の即売会と、H.P.FRANCEの40周年を記念する特別な受注会を開催いたします。
【即売会・受注会 巡回スケジュール】
■2025年10月8日(水)~28日(火) H.P.FRANCE 札幌店(大丸札幌店 3F)
■2025年11月7日(金)~27日(木) H.P.FRANCE Boutique 西宮店(西宮阪急 2F)
■2026年1月9日(金)~29日(木) H.P.FRANCE 京都店(大丸京都店 1F)
【即売会のみ開催】
■2025年12月5日(金)~24日(水) 記憶 H.P.FRANCE(新丸の内ビルディング 1F)
2025年12月6日(土)14時-17時 デザイナー・猪野屋牧子来店
■2026年1月9日(金)~29日(木) H.P.FRANCE 福岡店(大丸福岡天神店 東館エルガーラ 3F)