GICLAT | “崩し”の哲学から紐解くゴールドとダイヤモンド
2015年に誕生した日本のジュエリーブランド、GICLAT(ギクラ)。デザイナーの麦倉隆晴(むぎくら たかはる)氏がものづくりの核に据えるのは、彫金の高度な技術“彫留め(ほりどめ)”である。
ブランド立ち上げのきっかけと、素材のこだわり
“彫留め(ほりどめ)”とは、地金に穴を掘り、タガネを用いて石を留める技法を指し、彫金の中でも高度なテクニックと言える。麦倉氏は、この技法を学ぶため、イタリア・フィレンツェに留学。帰国後、「自分の技術の集大成となるファインジュエリーを作りたい」という長年の思いを形にし、18Kゴールドやダイヤモンドをメインに扱うGICLATを立ち上げた。
それ以前にはアクリルや真鍮など多彩な素材でジュエリーを制作してきたが、高価なゴールドやダイヤモンドは当初扱えなかった。それでも「いつかは長く愛されるジュエリーを手掛けたい」という願いを抱き続けてきたという。
それ以前にはアクリルや真鍮など多彩な素材でジュエリーを制作してきたが、高価なゴールドやダイヤモンドは当初扱えなかった。それでも「いつかは長く愛されるジュエリーを手掛けたい」という願いを抱き続けてきたという。
 
  
  
  
    
 
  
  
  
    
麦倉氏の素材へのこだわりは徹底している。18Kはマットな質感やホワイトゴールドとのコンビネーションで、ダイヤモンドの輝きがいっそう引き立つよう配合を工夫。一点物の場合、ダイヤは均一なものではなく、あえて形に癖のある石を選び、留めにくいものを彫留めで仕上げる。「その個体差こそ味になる」と語るように、石の表情に宿る独自性が手仕事ならではの風合いを際立たせるのだ。
 
  
  
  
    
自然との関わりから生まれるジュエリー
インスピレーションの源は、3年前にアトリエ兼ショップを構えた鎌倉という土地にある。以前の拠点・藤沢と同じく、海や山がすぐそばにある環境だ。ブランドをスタートする前から「自然が好きで、自然をテーマにしたジュエリーを作りたい」という漠然とした構想があったという麦倉氏。ただ、彼が思い描いていたのはかしこまったジュエリーではなく、陶芸家の作品のような、“崩した手の風合い”に価値を見出せるものだった。その作風と、自然がマッチすることから、「木漏れ日」や「波」、「雲」など、自然の要素をジュエリーのモチーフに取り入れるようになった。
麦倉氏は「都会だと目に入るのはつくられた自然。鎌倉では、意図せず生まれた自然の形に出会える」と話す。たとえば、砂浜で見た水の流れが砂に描くマーブル模様。その一瞬の自然現象を頭の中で哲学的に掘り下げ、熟成させ、ある日ふと形が噛み合った瞬間にジュエリーへと昇華させていく。
麦倉氏は「都会だと目に入るのはつくられた自然。鎌倉では、意図せず生まれた自然の形に出会える」と話す。たとえば、砂浜で見た水の流れが砂に描くマーブル模様。その一瞬の自然現象を頭の中で哲学的に掘り下げ、熟成させ、ある日ふと形が噛み合った瞬間にジュエリーへと昇華させていく。
鎌倉のアトリエ兼ショップにて。二人三脚でGICLATを育む、デザイナー 麦倉隆晴氏(右)と妻・清夏さん(左)。
 
  
  
  
    ブランドの世界観を体現するショップ。奥のガラス面を一枚隔てたすぐ奥に、アトリエを併設。
 
  
  
  
    彫金の機械や工具が整然と並ぶ、ラボのようなGICLATのアトリエ。
手仕事の風合いと、“崩し”の哲学
「緊張感のある作品がいい。デザインの基盤には“崩し”の工程がある」と語る麦倉氏。ジュエリーとしての完成度を一度きちんと目指した上で、そこから要素を削ぎ落とし、理想の形へ近づけていく。崩し切らない加減と、ジュエリーを身に着けたときに美しく見えるバランス。その境界線を見極めることで、形はしっかりしながらも要素が省かれ、少しだけ“崩された”魅力をまとう。
 
  
  
  
    
 
  
  
  
    形にこだわって買い付けているダイヤモンド。
 
  
  
  
    
さらに、仕上げの工程まで抜かりない。「最後に石を留め、刻印を施す瞬間が一番楽しい」と、デザインを固める上での一連の崩しの作業とは対照的に、仕上げにはたっぷり手間と時間をかける。「滑(ぬめ)っとした風合いは好まないので、きっちり角を出していく」と語る麦倉氏。素材がベストな状態で収まり、形も留めも理想通りに仕上がったとき、石が一斉に光り出すように見えるという。
一点物の場合は特に、覆輪(宝石を地金で囲んで留める石留め技法の一つ)を用いることが多く、石に対してどれだけ地金が被っているか、地金自体の厚みや、石の深さなど、顕微鏡と目視の両方で確認しながら、微細なレベルまで美しさを追求する。その徹底した“引き算のデザイン”は、時に納得のいかない作品を迷わずボツにする厳しさも含めて、GICLATという世界観を支えている。
一点物の場合は特に、覆輪(宝石を地金で囲んで留める石留め技法の一つ)を用いることが多く、石に対してどれだけ地金が被っているか、地金自体の厚みや、石の深さなど、顕微鏡と目視の両方で確認しながら、微細なレベルまで美しさを追求する。その徹底した“引き算のデザイン”は、時に納得のいかない作品を迷わずボツにする厳しさも含めて、GICLATという世界観を支えている。
 
  
  
  
    多くの作業がこのスペースで行われる、麦倉氏のワークデスク。
 
  
  
  
    顕微鏡を使い、肉眼でも確認しながら彫金を行う。
 
  
  
  
    
 
  
  
  
    お気に入りの道具は、サクサク削れるやすり。金属が削れる触感が気持ち良いそうだ。
GICLAT × H.P.FRANCE 40周年記念リングを制作
今回、H.P.FRANCEの設立40年を祝して、ひとつのリングに3種類のデザインを組み込みんだ限定モデル(通称:パタパタリング)が制作された。組み合わせを変えることで幾通りもの表情を楽しめるこのリングは、使い手によって唯一無二の存在感を放つ。
 
  
  
  
    
 
  
  
  
    
このリング誕生のきっかけは10年ほど前、麦倉氏がGICLATをスタートして間もない頃に遡る。当時、複数のパターンにアレンジ可能なリングのデザインを考えていた時に思い付いたもので、丸カンで繋がったそれぞれのパーツをパタパタと倒すように動かすことで、異なるデザインを何通りも楽しめる。最初は一点物として、2種類のデザインを組み込んだリングが制作されたが、「drama H.P.FRANCE」のスタッフたちの記憶に残り、過去には何度か別注イベントも開催された。
今回発売されたモデルは、40周年の特別感を演出するため、18Kゴールドに10粒のダイヤモンドがあしらわれ、18Kホワイトゴールドの地金には一石のサファイアがセッティングされた華やかな仕様だ。
今回発売されたモデルは、40周年の特別感を演出するため、18Kゴールドに10粒のダイヤモンドがあしらわれ、18Kホワイトゴールドの地金には一石のサファイアがセッティングされた華やかな仕様だ。
 
  
  
  
    麦倉氏がブランド設立当初から少しずつ書き留めているネタ帳。ふと思いついたこと、石の使い方、留め方の楽しいアイディアなどをメモして、後々デザインに起していく。写真のページでは、パタパタリングの元となったデザインを発見。
 
  
  
  
    
 
  
  
  
    
自然と響き合い、素材に向き合い、崩すことで研ぎ澄まされていく。鎌倉の空気を吸い込みながら生まれるGICLATのジュエリーは、18Kとダイヤモンドにデザイナーの思想と技術が溶け合うことで、静かに、そして確かに輝きを放っている。
Recommend Item
【GICLAT取扱店舗】
drama H.P.FRANCE 広島 2025.9.5 GRAND OPEN!
広島市中区本通10-1 広島PARCO 本館1階
TEL 070-3109-4792
drama H.P.FRANCE 梅田店
大阪府大阪市北区角田町8-7 阪急うめだ本店 1F
TEL 06-6313-7429
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