DOMESTIQUE | 何気ない日常から生まれる、レザーバッグと自由な発想
パリ10区、消防署跡地を改装したインキュベーション施設『La Caserne（ラ・カゼルヌ）』の一室に、DOMESTIQUE（ドメスティック）のアトリエはある。
2016年にパリで設立されたバッグブランド、DOMESTIQUE（ドメスティック）。 日常で目にする何気ないものに着想したデザインと、製作の全工程で環境問題に配慮するサステナブルな背景が特徴だ。2023年には、第30回2023年「パリ市クリエーション大賞」のアクセサリー部門においてグランプリを受賞。現在はパリ10区にある、フランス初のSDGsを牽引する若手クリエイターのインキュベーション施設『La Caserne（ラ・カゼルヌ）』の一室にアトリエを構え、制作活動を行っている。パリで最も古い消防署を改築した4000平方メートルに及ぶ広大な建物の敷地内には、生地のショールーム、製品サンプル作成や耐久性テストが可能なラボをはじめ、一般開放されているショップやレストラン、クラブなども構え、業界内の連携を促進する役目を果たしている。
消防署を改築した『La Caserne（ラ・カゼルヌ）』の外観。
エントランスからすぐの、気持ちの良い中庭。
クリエイターたちが撮影をしたり談笑したり、のびのびと活動している。
DOMESTIQUEのアトリエに面したテラス。レザーバッグを鉢植えとして使用するユニークなアイディア。
テクノロジーとクラフトマンシップの融合
DOMESTIQUEのデザイナー、バスチャン・ベニーは独学でデザインを始めた後、『エルメス』の中でも廃材を再利用してプロダクトを生み出す『Petit h（プティ・アッシュ）』チームに参加。バスチャンは、今まで経験してきたことの全てが、DOMESTIQUEの作品づくりに繋がっていると語る。「どの素材も時間も、無駄にしないノウハウを得られた。アイデアさえ決まれば、どの技術を駆使すべきか分かっているから、よりクリエイティブな工程やデザインに集中できる」と自信をのぞかせ、ブランドが掲げる“在庫ゼロ”、“廃棄物ゼロ”のポリシーや、遊びの感覚と自由な発想は、このキャリアが基盤となっている。
一点ずつ丁寧に仕上げていくデザイナー、バスチャン・ベニー。
セールスから広報までマルチにこなす右腕のソフィア（左）と、バスチャン（右）。
アトリエで黙々と作業するスタッフたち。
フランスの市場から着想を得たレザーバッグのコレクション。
バスチャンは、素材を無駄なく使い切るためパターンを緻密に最適化し、施設内の最新鋭ラボでレーザー裁断を行った後、レザーの表面を丁寧に研磨して、塗料が染み込みやすい下地に整えていく。より美しく仕上げるため、縁には『フィルタージュ』と呼ばれる細い線を入れる作業など、ビッグメゾンでキャリアを磨いた彼ならではの細かいテクニックも見られる。こうして、デジタルとモダンな設計の中に、熟練の繊細な手仕事が吹き込まれていく。
最新鋭のテクノロジーが揃う『La Caserne』内のラボ。
PCから読み込んだデータの通りにレーザーで焼き、裁断と印字を行う機械。
DOMESTIQUEのチャームは全て、ハギレを用いて作成される。廃材を徹底的に残さないのが、ブランドのポリシーだ。
レーザー裁断機の他にも、超高速で縫製可能なミシン、転写機、製品の耐久性をテストする研磨機や引張試験機など、さまざまは機材が揃う。
半2階にはパターンを起こしたり、3Dモデリングを手助けするスタッフが常駐。クリエイターたちの最初のアイディアを立体に具現化するための技術面をサポート。
作品に昇華される日常のワンシーン
DOMESQITUEのユニークなデザインと自由な発想は、どこから生まれてくるのか。バスチャンは、「日常で目にするあらゆるものに対して僕が向ける視線は、重いくらいに熱い」と語る。紙袋やビニール袋など、普通の人にとっては味気ないオブジェにこそ、惹かれるそうだ。たとえば彼の幼少期には、父親がポストイットのメモを食卓に沢山貼っている場面がずっと記憶に残っており、ポストイットへの熱い思いが生まれた。そんな味気ない日常の、誰も気にしないようなワンシーンにバスチャンの視線が加わると、「トランスフォーメーション（変身）」が起こり、全く新しいものが生まれるのだ。
仮に、それが世の中でネガティブに思えるものでも、180度違った発想によって楽しく、洗練されたオブジェに変換されていく。そのパラドックス（矛盾）を扱う大胆不敵さこそ、DOMESTIQUEのDNAだ。彼の視線が切り取った日常に 、これからも注目していきたい。
仮に、それが世の中でネガティブに思えるものでも、180度違った発想によって楽しく、洗練されたオブジェに変換されていく。そのパラドックス（矛盾）を扱う大胆不敵さこそ、DOMESTIQUEのDNAだ。彼の視線が切り取った日常に 、これからも注目していきたい。
アトリエ内の、作品展示スペース。
ヤスリでレザーの表面、角や縁の部分を丁寧に研磨するバスチャン。
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