Alex Monroe | スケッチブックから生まれる自然の物語

目次

美食スポットとしても今大人気のエリア、 ロンドンブリッジ駅近くに、Alex Monroe(アレックス・モンロー)のショップ兼スタジオはある。
屋上のミニガーデン、生き物や植物のオブジェやアンティーク小物などで満たされた、温かな空間だ。
自然と調和する佇まいの中で、日々の気配をそっとすくい取り、ジュエリーへと落とし込んでいく。デザイナー、アレックスが語る、40周年への想いと創作の日常を紐解く。




ワークショップで作業をするアレックス。

ロンドンのスタジオと、Alex Monroeのものづくり

―あなたのスタジオには、どんなこだわりが詰まっていますか?
スタジオは、僕の世界をそのまま形にしたような場所です。屋上には小さなガーデンがあって、各フロアには過去のアーカイブコレクション、植物のオブジェ、家族が描いたドローイング、アンティークショップで見つけた小物が並んでいます。ここに足を踏み入れた瞬間、「Alex Monroe の世界に入ってきた」と感じてもらえたら嬉しいですね。窓がなく、植物のないような空間は想像できません。オープンで、自然を感じられる“温度”が常に必要なんです。

ロンドンブリッジ駅から歩いてすぐの、Alex Monroeのショップ兼スタジオ。

入り口のドアノッカーも、ブランドのアイコンである蜂のモチーフ。

建物内の至る所に植物やオブジェがディスプレイされている。

スタジオ屋上のミニガーデンを案内してくれたアレックス。

―ワークショップでの制作体制について教えてください。
ワークショップには僕を含めた複数のワークベンチがあり、全員がデザインも制作も両方を手掛けます。チーム全員がそれぞれのテクニックやアイデアを持ち寄り、まさに“一緒につくるブランド”になっています。
良いチームワークを築くことは、料理と同じなんです。たとえば、僕が娘と料理をしていると、誰かがソースを作って、僕が味見して「おいしいね。少し塩を足してみよう」と言う。別の人が別のパートを作って味見をし合う――そんな感覚。ジュエリーも同じく、アイデアを交換しながら、おしゃべりしながら作っていくのが僕のスタイルです。僕一人から始まったブランドですが、今はチーム全体で味を整えるように形づくっています。

ワークショップのフロアでは複数のスタッフが作業をしていた。

お気に入りの道具は日本製ハンマー。イメージ通りのテクスチャーをつけるため、自ら金属で工具を作ることもあるそう。

「両親のスリッパのような着心地」と言うアレックスの作業着。穴は彼の娘さんがパッチを縫ってくれたもの。

作品制作のためのイメージボード。

自然との関わりとインスピレーション

―自然や日常は、あなたの創作にどう影響していますか?
僕は森も川も海も好きで、とにかく自然が大好きです。都会で働いていながら、田舎でスケッチをしたり絵を描く時間がとても大切。ロンドンのスタジオには、川でセーリングしたときに拾った貝殻も飾っていたりと、日常の小さな記憶が創作の種になっています。

オフィスフロアで取材に応じてくれたアレックス。ここにも沢山の植物やオブジェが。

―思いついたアイデアは、いつもどのようにストックしているのですか?
僕は、二冊のスケッチブックを使っています。
一冊は、いつも持ち歩くもの。旅先でも、妻が読書している傍らでスケッチするのが好きで、僕にとってはメディテーションのような時間です。ガーデニングの道具、押し花、葉っぱ、魚のスケッチ、レシピまで、僕の日常が全部詰まっている。最近では、自然の中で見つけたホップをスケッチして(新鮮なホップはすごく美味しいんです)、その先端を夕食のパスタ用に摘んで帰ることも。僕にとっては料理もジュエリーも、“ひと続きの生活の営み”なんです。
もう一冊は、ジュエリー用のアイデア帳。実際のデザインは、ワークベンチで金属を触りながら決めていきます。

アレックスの視点から見える日常が垣間見えるスケッチブック。

カントリーサイドの別荘で休暇中、庭で収穫したセロリと栗でスープを作った時のレシピ。

最近の活動について

―2025年5月に開催された、ガーデン・ミュージアムでの展示「Into the Wild」について教えてください。
展示作品を準備するにあたって、イギリスで絶滅の危機にある5つの生息地を訪れ、その場で植物をスケッチしたものからオブジェを制作しました。時には、娘も一緒にフィールドへ行きました。
展示に使った花瓶も自分で制作し、スケッチした場所の草木を燃やして灰にし、塗装の顔料に使いました。色も形も、その土地そのものです。

花瓶にもその土地に生息する生き物が装飾されている。

―最近、創作のインスピレーションになった出来事はありますか?
“H.P.LOVE”という40周年のテーマ、そして来年40周年を迎えるAlex Monroeと節目が重なったこのタイミングは、過去のコレクションを振り返る良いきっかけになりました。昔の思い出の箱を開けるような作業の中では、H.P.FRANCEとのコラボレーションで制作したコレクションなども出てきて、とても刺激になりましたね。

ブランド設立から間もない頃(1986年〜1988年)に制作されたコレクション。

H.P.FRANCEの20周年で制作したリング。

毎シーズン、コレクションの試作品から最終的に採用されなかった、いわゆる“Bチーム”のアーカイブ。

H.P.FRANCEの40周年に制作した二種類のネックレス

―今回、“H.P.LOVE”をテーマに特別に制作してくださったアイテムについて教えてください。
H.P.FRANCEから“H.P.LOVE”というテーマで依頼を受けたとき、この鳥のアイデアがすぐに思い浮かんだんです。ループの中に二羽の鳥が寄り添う様子は、20年前に描いたスケッチから生まれたアイデアで、ずっと心に残っていたもの。お互いを与え合う象徴的な姿で、“LOVE”のテーマにぴったりだと思いました。
さらに、Alex Monroeも2026年で40周年を迎えるので、クラシックな花とハートのデザインも提案しました。二つとも全く異なる表現だけれど、それぞれが象徴的なLOVEになったと思います。

―最後に、H.P.FRANCEとあなたのファンであるお客様へメッセージをお願いします。
長い年月を共に歩んできたH.P.FRANCEには、心から感謝しています。自由に創作し続けるためのサポートをいつも与えてくれました。そして、僕たちのジュエリーを愛し続けてくれた日本のお客様に、深くお礼を伝えたいです。これからも、自然と物語の宿る新しいジュエリーを届けていきます。

Alex Monroe ロンドンブリッジ店のメインウィンドウ。標本のように額装されたジュエリーが並ぶ。

25SS「Wild Botany」コレクションのディスプレイ。ラボ風のオブジェとフルーツを組み合わせ、ヴィンテージ什器に遊び心と季節感を添えている。

Alex Monroe コヴェント・ガーデン店のエントランス。

コヴェント・ガーデンの店内。


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【ALEX MONROE 取り扱い店舗】
・goldie H.P.FRANCE 新宿店/二子玉川店
・H.P.FRANCE 札幌店
・H.P.FRANCE BIJOUX 丸の内店/新宿店/梅田店
・Déclic 有楽町店/大阪店

※店舗により取り扱い期間、商品が異なります。各店へお気軽にお問い合わせください。